【株式会社ニューロマジック】DEI担当執行役員に訊く「誰にとっても働きやすい環境づくり」とは|働き方のサンゴ礁
2024.2.14 (水) updated
ダイバーシティ推進に先進的に取り組む企業の“多様な働き方”に焦点を当てた企画、「働き方のサンゴ礁」。
今回は、株式会社ニューロマジック(以下、ニューロマジック)執行役員の永井さんにお話を伺いました。
ニューロマジックでは会社としてDEI推進に力を入れており、2022年11月にはDEI担当執行役員として永井さんが就任。女性管理職比率の高さや、全国に在籍するメンバーとの組織づくり、そして今後の展望についてお聞きしました。
<インタビュイープロフィール>お名前:永井 菜月さん
役職:DEI担当執行役員
上智大学院グローバルスタディーズ研究科卒業。2018年当社入社。 サービスデザイナーとして、ユーザーインタビューなどの企画・実施から、調査結果を基にしたサービスの体験設計やブランドデザインを担当。 2020年よりチームリーダーとして育成や同グループの事業づくりにも携わる。
また学生時代から多様性やEquity(公平性)について関心を持ち、修士課程では米国のマイノリティコミュニティを研究。2022年よりDEI担当執行役員。顧客の課題に「体験デザイン」でアプローチする、ニューロマジック
ーーニューロマジックはどのような会社ですか?
私たちのミッションは、「あらゆるエクスペリエンスにおいて、もっともふさわしい解決を追求すること。」です。「エクスペリエンスエージェンシー」をスローガンに掲げ、サービスデザイン、プロダクトデザイン、ブランドデザイン等、課題に応じてアプローチしています。
ーー永井さんをはじめ、ニューロマジックの皆さんはどのような環境で働かれているのでしょうか?
リモートワークが可能で、地方在住の方もいます。また、外国籍の従業員も数名おり、私に声をかけてくれたのも外国人の上司でブラジル出身のコンサルタントです。私自身、インターンから正社員になったという経緯があるので、私を受け入れてくれたプロセスや、その環境自体にすごくダイバーシティを感じました。また、社員の約半数は女性で、女性の管理職割合も高いです。女性管理職が多いのは「誰にとっても働きやすい環境づくり」に取り組んでいるから
ーー女性管理職割合の高さについて、その理由はどこにあるのでしょうか。
誰にとっても働きやすい制度作りや組織作りをしたら、結果的に女性の管理職が増えたということだと思っています。一方で、例えば執行役員は私しか女性がいないので、さらに高みを目指していくためには女性向けの管理職研修やキャリアコーチなどが必要になってくると考えています。
今日本国内で議論となっている「まず女性管理職3割」みたいなところを目指すときに考えなければいけないのは、女性だけでなく普通に人として働きやすいっていう環境をちゃんと作ることだと思っています。
ーー働きやすい環境づくりの具体的な事例があれば教えてください。
具体的に言うと、まず一つ目はリモートワークですよね。子育てをしている人だけじゃなく、介護や通院、プライベートの予定などすごく柔軟性が出たと思います。女性のためだけに取り組んだわけではないですが、結果的にママさんたちにすごくメリットを共有できています。
二つ目はジョブクラフティングの推進を数年前から経営計画で掲げていて、自分がやりたいキャリアは何なのかを考えてもらえるように、マネジメント層も頑張って支援するという風土を徐々に作っています。それが結果的に無理なく自分らしく働くことに繋り、管理職になってもいいなと思う人が増えたり、それぞれがのびのび自分のキャリアについて考えられているのだと思います。
三つ目は、地道にちゃんと有給取得の促進や、長時間労働の是正などに厳しく取り組んできたということ。
あと最後の一つは、採用のときに企業ビジョンとかカルチャーにフィットする人を採る形にしてきたので、そもそも入ってくる人たちもそういう自分らしく働くとか自分でキャリアを作ってくみたいなことに興味がある方々を取ってるっていうところですね。
この四つが具体的にあったことなので、振り返ってみると冒頭で申し上げたように、女性だけでなくみんなが働きやすい環境づくりをきちっとやった成果かなと思ってます。
ーー実際に子育てしながら働かれてる方は多いですか。
多いですね。平均年齢も30代半ばくらいなので、ライフイベントが多い年齢ですし、小学生以下のお子さんのいる方が多いです。産休育休を2回取得して、戻ってきてくれたメンバーもいます。
ーーお子さん都合での急な休みの時、どんなコミュニケーションを取っていますか。
基本的にはプロジェクトのメンバーや上長に報告してもらえばそれで問題ありません。もちろん、自分自身が与えられた業務を締め切りまでにやるというベースがある上でなので、無理なタスクが出れば振ってもらうし、合間にこれは自分でやりたいということであればやってもらう等、自分で決めていただくような感じですね。子育てに限らず急に体調が悪くなって休むことは普通にあるし、みんなも受け入れているので、みんなが稼働を調整しやすい環境づくりをしています。
ーーお互い様という安心感がありますね。
いい循環なんだと思います。自分自身が急にお休みしなきゃというときに、周りが嫌な顔せずに受け入れてくれたからこそ誰かが休むとなったときにフォローするだろうし、その循環をいかに作るかというところなんだろうなと思います。DEI担当執行役員として、いま注力していること
ーー永井さんはDEI担当執行役員として、どんなことに注力されているのでしょうか。
私が今のポジションに就任したのは2022年11月で、それまではDEI推進担当とか推進室のようなポジションはありませんでした。ただ、それまでも働き方改革だったり、色んな個性を持った人が働きやすい環境づくりというのはずっと取り組んできていて、そういったニューロマジックの経営理念を「DEI」という領域で、きちんとポジションをつけてやっていくことが今の時代に即しているということで、まず私が就任させていただきました。
今は経営目標として基本的な施策の拡充や明文化などベーシックな目標設定をして、その数値をきちんと達成していくっていうことをメインでやっている感じですね。
たとえば直近ですと、Famieeの導入準備をしていて、異性婚だけではなく同性婚・同性パートナーを持つ方々も異性婚と同じように社内メリットを使えるよう動いています。家族という概念を拡張して、社内メリットに関する制度拡充だったりとか、病児保育の支援制度の拡充、ハラスメントやアンコンシャスバイアスについての研修の実施、あとは一緒にDEI推進に取り組んでくれているメンバーのみんなでコミュニティを作って、気軽にDEIに触れたり話せたりするような場を作ったりといったことをやっています。
ーー永井さんはもともと、DEIに関心があったのでしょうか。
実は私は大学院のときからずっと多様性について勉強してきて、会社に入ってもそういうことをやりたいなと思っていたんです。ニューロマジックは従業員規模も100人を超えてきたところで、組織的な課題も増えてきてはいるもののまだまだ小さい組織で自由なので、評価制度などもやっと明文化されたものが今できてきているというフェーズです。私だけじゃなく、みんながそれぞれの領域でそういうタイミングだったりもするので、柔軟に変化を受け入れてくれる社風の中で、一歩一歩、一生懸命やっているという感じです。社員の働きやすい環境をつくるだけでなく、社会全体にアプローチしていきたい
ーー多様なバックグラウンドの人が活躍する組織づくりを大切にする文化は、創業当初からのものなのでしょうか。
Webの黎明期だった1994年の創業当時から、新しいイノベーションをキャッチして意義のあることをする、という文化が受け継がれており、ニューロマジックの幹になっていると感じています。
ただ、いろいろと昔の話を聞いていくと、平成初期・90年代の広告業界は資本主義の成熟の中でものすごい働き方を強いてきたり、個性を大切にしないような風潮の中で成長してきた業界だったりするので、ニューロマジックもそんな社会の潮流の中で今ではブラックと呼ばれるような働き方をしてきた過去もありました。そんな状況から変わることができたのは、本質的に企業組織がどうあるべきか考え、何をすべきかというところにちゃんと向き合える体質が経営層にあったということだと思っています。
例えば、日本の女性管理職割合は欧米諸国と比べて低いですが、企業組織が長く繁栄していくためにはサステナブルな働き方や多様性を持った職場環境が有益なことは科学的にわかっています。企業の生き残りのためにもそれを実現しようとし、他のことでも同様に「本質的に正しいことは何か?」ということを常に問うてきた経営陣であることが、これまでにもサステナブルな働き方が実現されてきた一番の要因だと思っています。それは経営トップの思考もですし、それに共鳴した人がきちんと集まっているからこそですね。
ーーニューロマジックの魅力のひとつに働き方があると思いますが、採用時と入社時でギャップをなくすためにもカルチャーフィットを重視しているのでしょうか。
そうですね。会社の風土づくりについては、一緒につくり、ご自身でも体現してくれる方を探しています。あとは、「誰が言うかじゃなく何を言うか」がすごく体現されている会社なので、入社前も後も体感していただけるんじゃないかなと思います。
もちろん他の企業さんも当たり前に悩んでいるような、やっぱりリモートワークで孤立してしまう人がいるとか、あとは実際に配属されてみたらちょっと合わないかも、みたいなことは人間同士の関わりなので、ニューロマジックにも当たり前にあります。だからこそ、私達も面接でそれを候補者の方にも共有しながら、一緒に風土をつくり、体現していってもらいたいと思っています。
ーーリモートワークでのコミュニケーションで工夫されていることはありますか。
リモートワークについては、もともとオフィスが築地なので2020年のオリンピックのときに多分出社はできないだろうというところから構想はしていたものの、それより前にコロナウイルスが流行したことで想定より早く始まったような状況ではありました。
施策については徐々に生まれては改善というのをやってきたのですが、まず1つは定期的に出社推奨日を各グループとかチームが設けていて、メンバーが集まる日を作っていることですね。
あとは「エルダー制度」と言って、斜め上の隣のチームの、ちょっと自分より先に入った人とか、隣の隣のチームの同世代の人とか斜めの関係性を必ず入社したときにマッチングするようにしています。例えば入社してすぐ誰かに話したいことや聞きたいことがあったときに、上長ではなくエルダーにも聞いていいよ、と新入社員のメンバーには伝えています。
あとは執行役員がオフィスアワーを定期的に開催しています。オフィスアワーに来てくれれば、経営層と気軽に話すことができ、案件の相談から最近のモヤモヤ、やってみたいことの提案など、それぞれの担当領域の執行役員に話ができるようにしています。
また「コミュニケーション出張」という制度が認められていまして、案件が発生していなくても、グループの出社推奨日に合わせて遠方に住んでいるメンバーが東京に来る際などに年に2回、費用を会社で負担しています。
ーー最後に、永井さんの今後の展望について聞かせてください。
大きく分けて二つあります。一つ目はまず、明文化とか施策作りみたいな当たり前にやらなきゃいけないことをきちんと、メンバーの皆さんと一緒にやっていくっていうところですかね。今やってる施策づくりはたくさんあるので、それを推進していきたいです。
もう一つは、例えば同性婚についても、会社で認めるということはできても、日常生活の中で国が認めてくれなければ実現できないことが多くあります。また、ニューロマジックがあまりにも働きやすくて融通が利くから、逆に女性に引き続き家事とか育児の負担がのしかかってしまうという話を聞いたりしたんです。どんなにニューロマジックが良い場所になっても、一歩外に出たら関係性が変わっていなかったりするんです。
問題を追っていけば追っていくほど、民間の一企業だけでは達成できない課題にぶち当たるのがDEIの領域だと思います。でもそれを諦めずに、会社というところに軸足を置きながらも、社会が変わっていくべきところを一緒に言語化していく作業だったりとか、社会が本質的に変わることをどれだけ後押しできるかっていうことにも、今後はコミットしていきたいなと思っています。編集後記
会社としてDEI推進に取り組んでいるニューロマジックさんでは、子育て中の方に限らず誰もが働きやすい環境づくりに取り組んでいるほか、「エルダー制度」「コミュニケーション出張制度」など、リモートワークでもコミュニケーションのギャップを埋めるための工夫が様々おこなわれているのが印象的でした。ひとつの企業の中だけでなく、社会全体のDEI推進にコミットしていきたいという永井さん、そしてニューロマジックさんの想いが、多くの方に届くことを願っています。
株式会社ニューロマジック
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ニューロマジックは1994年創業の、デザインコンサルテイングと各種クリエイティブを提供する会社です。 「EXPERIENCE AGENCY」をスローガンに、DX・SX推進、サービスデザイン、WEBインテグレーションなどを駆使して、「ふさわしい体験の創造」をお手伝いしています。
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